Project Story 01 五葉山太陽光発電プロジェクト 五葉山太陽光発電合同会社×株式会社インデックスコンサルティング

プロジェクト概要

農業利用ができなくなった被災地の土地を太陽光発電事業で再生

2011年の東日本大震災後、インデックス コンサルティングは東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻の宮田秀明教授(※)とともに一般社団法人東日本未来都市研究会を設立しました。目的は、環境未来都市としての被災地の復興です。震災時に課題となったエネルギー問題の解決を視野に入れ、岩手県気仙地域の大船渡市・陸前高田市・住田町の2市1町に環境未来都市構想の実現を目標にした復興計画をご提案。その計画の一環として始動したのが、五葉山太陽光発電プロジェクトです。最大出力18メガワットという大規模太陽光発電事業の実現への取り組みをご紹介します。
※当時。現在は東京大学名誉教授。

プロジェクトメンバー

  • 前田建設工業株式会社

    五葉山太陽光発電所建設にあたって設立された、五葉山太陽光発電合同会社の代表社員。今回のプロジェクトの事業者として、建設後は発電事業を運営する。また、前田建設工業株式会社として太陽光発電所の設計・建設を担当。

    [右]松村大輔事業戦略室 事業企画部 マネージャー

    電気技術者として、太陽光発電所建設計画を全体指揮。技術的な方向性の検討から、建設工事の品質、工程管理、原価開示に基づいた原価の確認。設計変更やコスト変更に対応するためのチェックから書類作成まで、幅広い役割を担った。

    [左]堀川真加事業戦略室 事業企画部 上席調査役

    専門は土木技術。五葉山太陽光発電プロジェクトでは土木技術者として工事計画を担当。今回の太陽光発電事業計画の実現可否の検証から、発電所の構造やシステム構成などの設計、具体的な工法の監修などを多岐に渡って担当。

  • 株式会社インデックス コンサルティング

    環境未来都市構想の実現を目標とした、社団法人東日本未来都市研究会の一員として、五葉山太陽光発電プロジェクトにおいては構想段階から開発担当兼監理者として事業をサポートしている。

    野本勝PM事業開発本部(現プロジェクト開発管理本部)本部長
    (※当時。現在は株式会社インデックスファシリティーズ代表取締役)

    五葉山太陽光発電所プロジェクトにおいて、東日本未来都市研究会メンバーとして計画立案や候補地の選定、農地転用許可を得る際の行政折衝に関与した。またインデックス コンサルティングとして監理者を担い、計画、建設時の監査などを行い、プロジェクト全体をサポートした。

インタビュー 震災復興と、環境未来都市構想の実現という大きな目標に向かって。

松村大輔 / 堀川真加(前田建設工業株式会社)野本勝(株式会社インデックス コンサルティング)

野本:今回の五葉山太陽光発電プロジェクトの背景にある大きな目的は、震災復興・環境未来都市構想の実現です。東日本未来都市研究会ではそのために、気仙地域2市1町の電気需要に対する再生可能エネルギーの比率を約30%まで引き上げることを目標としました。五葉山のプロジェクト(以下PJ)はその一環であり、第一号のPJとして、地域の皆さんをはじめ関係各所から大きな期待をかけられていました。

松村:建設にあたりその期待の高さを、ひしひしと感じました。建設現場には毎週のように地元の方々が見学に訪れます。復興のシンボルとして見てくれていた方も多かったと感じています。

堀川:前田建設工業では、これほど大規模な再生可能エネルギー事業は初めての経験でした。建設後、20年間の運営が必要なPJであり、プレッシャーも大きかったです。建設前の五葉山は農地であり被災地の状態でした。事業が本当に計画どおりいくのか、想定リスクを回避しながらどうやって実行するか……課題に対する答えを探っていました。

農地を事業地に転用するという大きな課題。

野本:この土地における課題のひとつは、農地であった点です。震災前は牛の放牧地であったため、そのままでは発電事業ができません。しかし、震災後はセシウム被害により放牧ができず、別の活用法を探していた背景があります。

制度上の農地を発電所に転用するには市や県との協議が不可欠ですが、震災被害の背景もあって復興事業として全面的な協力を頂くことができました。事業の価値を明確にし、事業地への転用許可を頂くには実務的な労力が少なくありませんでしたが、苦労したかいがあったと思っています。

その後、前田建設工業さんをPJの事業者として採択し、五葉山太陽光発電合同会社が発足しました。我々はこれまで東日本未来都市研究会の一員として五葉山太陽光発電所の実現に向けたご支援をしてきましたが、本格的にPJが動き出すのに合わせ、発電所建設の監理者に立場を変え、継続して事業サポート役を務めました。

傾斜が10度以上ある斜面地に発電所を建設する。

堀川:五葉山は斜面地で、傾斜が10度以上。建設地としては非常に厳しい条件です。もちろん費用をかければ施工方法はいくらでもありますが、事業効率が悪くなってしまいます。なんとか、コスト削減と工期短縮を図れないか……初期は毎週のように野本さんらインデックスのメンバーとの打ち合わせを重ねました。

環境維持型太陽光発電の実現。

堀川:もう一つの課題は、できるだけ環境に影響を与えずに施工を行うことです。通常の太陽光発電所建設は、平坦地で行われます。五葉山に従来の方法論を持ち込むと、山を削り平地にして発電所を建設するという発想になりますが、それではいけません。セシウム被害が落ち着くと予想される20年後に、再度放牧地に戻すという地域の皆様の要望があるからです。そこで特別な工法を用い、斜面を造成せずそのままの状態で発電所を設置する方針を選択しました。

野本:すごく簡素化して説明すると、斜面に杭を打ち込み、その上にパネルを固定していく工法ですよね。計画した当時は珍しく、斜面地で実現できる技術を持っていたのは、前田建設工業さんだけだったんじゃないですか?

堀川:現在では一般的になりつつありますが、当時は「どうやって施工したのか」という問い合わせが多かったですね。それだけ、社会に与える影響の大きな事業に関わっているのだと、驚きました。

発注者と受注者ともにメリットの大きい原価開示方式

野本:PJの特徴の一つに、原価開示方式の採用があったと思っています。

堀川:日本の建設業の一般的な工事契約は、請負契約ですよね。契約金額の中で受注者がいくら費用をかけようとも、固定金額の中で受注者側の利益と損失になるだけという方式です。それに対して原価開示方式では、工事の原価を発注者に開示します。本当にかかった金額に、適切な利益のみを加算して清算するという方式です。

松村:このPJでは、発電事業者である合同会社の代表社員は前田建設工業であり、建設も前田建設工業が請け負っています。言うなれば身内で工事の受発注を行っている状態です。そこで原価開示方式を採用して、地域の方々やPJのステークホルダー全てに対し、工事契約をオープンにしたいと考えました。関係者の皆様に適切にご理解を頂き、全てのステークホルダーがWinWinの関係にならなければいけません。

野本:原価開示により、発注者側もコストが下がります。従来の請負契約では受注者があらゆるリスクを想定しておく必要がある分、工事費を高く見積もることになりがちです。原価開示方式では、発注者は実際に費用が発生した分だけのフィーを受注者に支払うので、全体のコストが下がります。また、受注者側にとってもリスク低減のメリットがあります。原価開示方式は受注者・発注者ともにメリットが大きいのです。

松村:しかし、その都度必要になる原価管理は大変でした。

野本 : 総事業費が約60億円のPJです。工事は数多くあり、発注も納入時期も無数にある。その伝票を全て整理し、帳簿を管理する。それを、第三者が見てもわかるよう正確に管理するには相当な苦労があると思います。

松村 : 原価開示方式の実行には、インデックス コンサルティングさんの力も大きかったと思います。インデックスさんにはコンサルティング業務の一環として、原価や支払いのチェックをして頂きました。設計段階から工事費用までトータルで監査できる会社は、日本には他に無いのではないでしょうか。インデックスさんにお墨付きを頂ければ、我々としても心強くどこから見ても間違いのない仕事ができていると胸を張ることができます。

野本 : ありがとうございます。本年8月に無事発電所が稼働いたしました。我々にとっても大きな目標である環境未来都市構想の実現に一歩近づくことになります。今後も本件のようなプロジェクトに取り組んでいきますので、よろしくお願いいたします。