人材をあまねく生かすには「仕事に勤めよ」

MAプラットフォーム、森章会長に聞く(3)

人材をあまねく生かすには「仕事に勤めよ」
MAプラットフォーム、森章会長に聞く(3)
(全写真:村田和聡)

──日本でも正社員と非正規社員の格差が深刻な問題になっています。

森:やはり年功序列や正社員という日本的な雇用慣行をなくし、会社に勤めるのではなく「仕事に勤める」という形にしていかないと立ちゆかなくなると思います。

日本では博士課程修了者をうまく活用できていません。その理由はさまざまでしょうが、経営者の立場から言えば、日本的雇用慣行の下では当てはめる先がないというのが正直なところです。専門性が高いことは利点ですが、一方でその業務がなくなれば他に移すのが難しく、流動性に欠ける。そうなると、正社員で雇うのはどうなのか、という議論にならざるを得ません。それに対して、「仕事に勤める」という形になれば、その仕事がなくなれば別の会社に移ればいいだけです。

博士課程を終えたドクターは、本来は国の宝です。専門的な知識を持つドクターが大学や企業で活躍しなければ、国の国際競争力は上がりません。バブル経済の頃の日本は多くの分野で世界一でしたが、平成の30年間で並みの国に成り下がりました。彼らを活用するとともに、教育をできる限り無償化して機会の均等を図らないと、日本はこのままズルズルと落ちていってしまうと思います。

──日本でも正社員と非正規社員の格差が深刻な問題になっています。

──日本でも正社員と非正規社員の格差が深刻な問題になっています。

森:やはり年功序列や正社員という日本的な雇用慣行をなくし、会社に勤めるのではなく「仕事に勤める」という形にしていかないと立ちゆかなくなると思います。

日本では博士課程修了者をうまく活用できていません。その理由はさまざまでしょうが、経営者の立場から言えば、日本的雇用慣行の下では当てはめる先がないというのが正直なところです。専門性が高いことは利点ですが、一方でその業務がなくなれば他に移すのが難しく、流動性に欠ける。そうなると、正社員で雇うのはどうなのか、という議論にならざるを得ません。それに対して、「仕事に勤める」という形になれば、その仕事がなくなれば別の会社に移ればいいだけです。

博士課程を終えたドクターは、本来は国の宝です。専門的な知識を持つドクターが大学や企業で活躍しなければ、国の国際競争力は上がりません。バブル経済の頃の日本は多くの分野で世界一でしたが、平成の30年間で並みの国に成り下がりました。彼らを活用するとともに、教育をできる限り無償化して機会の均等を図らないと、日本はこのままズルズルと落ちていってしまうと思います。

──少子高齢化の中、こういった課題を打開するのは相当なチャレンジですね。

──少子高齢化の中、こういった課題を打開するのは相当なチャレンジですね。

森:とても難しいと思います。しかも、現在進行している情報革命は労働力を減らす方向の革命だから、舵取りを間違えると、かえって経済が縮小してしまうかもしれない。CO2削減という国際公約を天恵として、どこまで少子高齢化と情報革命の中で国と企業の競争力を高めるか。これまでも勝ち組と負け組は出ましたが、これからは勝ち組もあっという間に負け組に転落します。仮に勝ち組になったとしても、その勝ちが長く続かないので、次から次へと回転していかなければならない。これからの経営者はなかなか厳しいと思いますね(笑)。

懸念しているのはインフレリスク

──先ほど世界的なカネ余り、過剰流動性について言及されていました。既に、世界には名目GDP総額を上回る金融資産が存在します。この状態は固定化するのでしょうか。

森:現状のカネ余り状態を巻き戻していくのは難しいと思うので、将来的にはインフレになるのではないでしょうか。日本は公的債務が膨大にあるので、インフレになれば国債は暴落するかもしれません。ただ、日本は対外資産も多く、財政的な信用がある。また、日本円は国際通貨で、日銀による国債買い入れも続けるでしょうから、しばらくは大丈夫だと考えています。いずれにしても、低金利を前提に経済を回しているので、一番怖いのがインフレなのは間違いありません。

この過剰流動性の中で企業をどのように経営するかということはいつも考えています。例えば、ソフトバンクは通信企業から投資企業になりました。それについてさまざまな意見が出ているようですが、今の時代は世界の名目GDP総額よりも金融資産の方が何倍も大きいわけです。投資対象の方が事業対象に比べ大きいと考えれば、孫(正義)さんの選択は正しいのかもしれない。ここら辺はどういう世界観を持つかによって変わるでしょうね。

懸念しているのはインフレリスク

懸念しているのはインフレリスク

──先ほど世界的なカネ余り、過剰流動性について言及されていました。既に、世界には名目GDP総額を上回る金融資産が存在します。この状態は固定化するのでしょうか。

森:現状のカネ余り状態を巻き戻していくのは難しいと思うので、将来的にはインフレになるのではないでしょうか。日本は公的債務が膨大にあるので、インフレになれば国債は暴落するかもしれません。ただ、日本は対外資産も多く、財政的な信用がある。また、日本円は国際通貨で、日銀による国債買い入れも続けるでしょうから、しばらくは大丈夫だと考えています。いずれにしても、低金利を前提に経済を回しているので、一番怖いのがインフレなのは間違いありません。

この過剰流動性の中で企業をどのように経営するかということはいつも考えています。例えば、ソフトバンクは通信企業から投資企業になりました。それについてさまざまな意見が出ているようですが、今の時代は世界の名目GDP総額よりも金融資産の方が何倍も大きいわけです。投資対象の方が事業対象に比べ大きいと考えれば、孫(正義)さんの選択は正しいのかもしれない。ここら辺はどういう世界観を持つかによって変わるでしょうね。

「広くあまねく」の時代は終わった

──インデックスコンサルティンググループは官民連携(PPP:Public Private Partnership)による、国内外の社会インフラの整備や更新のプロジェクトマネジメントに力を入れています。社会インフラについてはどのようにお考えでしょうか。

森:田中内閣の時の列島改造論以来、広くあまねくという考え方の下、日本は今も道路などのインフラを造り続けています。その意味では、日本のインフラは過剰だと思っています。

インフラではありませんが、日本は住宅も3割ぐらい余っていますよね。軽井沢のような別荘地も均等相続によって空き家が増えています。こういった別荘地やリゾート地を社会インフラ整備の名の下に集約化、立体化することで里山や森林などの自然を残していくというような考え方が今後は必要になると思います。もちろん、植村さんがおっしゃるように、インフラの整備や更新の際に民間の資金やノウハウを活用するのは不可欠です。

「広くあまねく」の時代は終わった

「広くあまねく」の時代は終わった

──インデックスコンサルティンググループは官民連携(PPP:Public Private Partnership)による、国内外の社会インフラの整備や更新のプロジェクトマネジメントに力を入れています。社会インフラについてはどのようにお考えでしょうか。

森:田中内閣の時の列島改造論以来、広くあまねくという考え方の下、日本は今も道路などのインフラを造り続けています。その意味では、日本のインフラは過剰だと思っています。

インフラではありませんが、日本は住宅も3割ぐらい余っていますよね。軽井沢のような別荘地も均等相続によって空き家が増えています。こういった別荘地やリゾート地を社会インフラ整備の名の下に集約化、立体化することで里山や森林などの自然を残していくというような考え方が今後は必要になると思います。もちろん、植村さんがおっしゃるように、インフラの整備や更新の際に民間の資金やノウハウを活用するのは不可欠です。

ただ、インフラは広くあまねくではダメです。過疎対策という言葉がありますが、本来は過疎地域で暮らせるようにする対策ではなく、過疎をやめる方向の対策であるべきです。1軒ぽつんと住んでいては困るわけですよ。日本は民主主義をはき違えています。

日本は、バブル崩壊前では世界2位の国際競争力があったのに、平成の30年間でズルズルと競争力を失っていきました。当時は日本の1億2000万人の中での競争に勝てば世界一でした。自動車、電機などあらゆる業界で世界を席巻しました。

ところが、グローバル化が進み世界での競争にフェーズが変わったのに、相変わらず狭い日本で過当競争を繰り広げた。世界は変わり、日本が負け組になりつつあるのに、プレイヤーの数が多いものだから輪をかけて弱体化したわけです。

AIを含めたこれからの情報革命では、勝ち組はさらに強くなっていきます。その競争に参加していくために、日本国だけでなく国民自身がキャッチアップしていかなければなりません。少子高齢化で人口が縮小していくことを考えれば、極めて厳しいチャレンジだと思いますが、それをしないことにはどんどん競争力を失っていくでしょう。

ただ、インフラは広くあまねくではダメです。過疎対策という言葉がありますが、本来は過疎地域で暮らせるようにする対策ではなく、過疎をやめる方向の対策であるべきです。1軒ぽつんと住んでいては困るわけですよ。日本は民主主義をはき違えています。

日本は、バブル崩壊前では世界2位の国際競争力があったのに、平成の30年間でズルズルと競争力を失っていきました。当時は日本の1億2000万人の中での競争に勝てば世界一でした。自動車、電機などあらゆる業界で世界を席巻しました。

ところが、グローバル化が進み世界での競争にフェーズが変わったのに、相変わらず狭い日本で過当競争を繰り広げた。世界は変わり、日本が負け組になりつつあるのに、プレイヤーの数が多いものだから輪をかけて弱体化したわけです。

AIを含めたこれからの情報革命では、勝ち組はさらに強くなっていきます。その競争に参加していくために、日本国だけでなく国民自身がキャッチアップしていかなければなりません。少子高齢化で人口が縮小していくことを考えれば、極めて厳しいチャレンジだと思いますが、それをしないことにはどんどん競争力を失っていくでしょう。